追憶 ―Episode19―

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 「やれやれ。何とか片付いたな。」

 全員が救助され、ようやく鎮火の兆しが見えてきた火災現場で。
 頬についた煤を拭いながら、ウィニペグが大きく息をついた。
 傍らのカルとブランカも、めいめいに全身の煤と格闘している。
 服を両手ではたきながら、カルが言った。

 「さてと。じゃあ2号と5号と合流して、例の現場へ行こう。大仕事だから
  気合い入れてかからないとね。嵐も近付いてるらしいから急がないと。」

 「大仕事」という表現は決して大げさではなかった。
 2日前、入港間近の超大型貨物船舶が岩礁を迂回し損ねて座礁した。乗組員は
 全員救助されたものの、場所が場所だけに大型の牽引作業機械を投入する事が
 出来ず、船は放置されている。もしこのまま嵐に巻かれて分解したり沈没する
 ような事になれば、積載された重燃料の流出でどれほどの海洋汚染が起こるか
 分からない。
 要請を受けたパーマンは、各々の仕事が終わり次第集結する事になっていた。

 踵を返して飛び立とうとした、その時。

 「ちょっと待ってくれ、1号。」

 背後から声をかけてきたのは馴染みの救急機動隊分隊長、ルーサーだった。
 煤けた服の内側に手を突っ込み、何かをガサガサと探り出す。

 「これを。」

 受け取ったカルが開いた紙には自分、つまりパーマン1号の絵が描かれていた。
 幼児らしく、幼く拙い筆致。しかし、それはまさしく自分が大空を翔けている
 姿だった。

 「実は、僕の担当区域にある病院にずっと入院している子が描いた物なんだよ。
  パーマンの大ファンで、とりわけ君を尊敬している。一度会って話したいと
  いつも母親に言ってるらしく、この間この絵をその母親から託されたんだ。
  僕がよく現場でパーマンに出会うというのは皆に知られてる事だからね。」

 「入院は、長いんですか?」

 カルの言葉に、ルーサーはちょっと視線を落とした。

 「ああ。治らない病気じゃないんだが、長引いてる。治療は難しいらしくてね。
  子供の病気は、大人以上に精神的な部分で左右される。だから、君が行って
  頑張れと言ってくれれば、これ以上の励みはないと思う。」

 「…わかりました。」

 答えたカルは、絵を丁寧に折りたたんで胸のポケットに収めた。
 やがて顔を上げる。

 「座礁船の引き揚げ作業があるから、すぐには行けません。だけどこの仕事が
  片付いたら、行きます。」

 「すまないな、大仕事の前に。頼むよ。」

 深々と頭を下げるルーサーに会釈したカルは、ウィニペグとブランカに視線を
 戻した。

 「じゃ、行こう。他の2人はもう向かってるはずだから。」

 「待てよ。」

 真っ先に飛び立とうとしたカルを、ウィニペグの低い声が制する。
 訝しげなカルの視線を見返すウィニペグの目は、厳しい色を帯びていた。

 「お前はその子の所へ行け。今すぐに。こっちはオレ達で何とかする。」

 「バカ言えよ。」

 即座にカルは反駁する。

 「どれだけ大仕事になるかはわかり切ってる事だろ?5人総がかりでも危険な
  作業なんだぞ。ここで僕が抜けたり出来るわけないじゃないか。…大丈夫。
  これが済んだら行くってば。」

 言って再び飛び立とうとしたカルは、ウィニペグに胸座を掴まれた。

 「これが済んだら行けるって保証はどこにもねえだろうが。現にこの火災も
  行く途中で出くわしたもんだろ?…後回しにするな。今すぐ行け。」

 「そんな。だけど…!」

 最後まで言う事は出来なかった。目の前のウィニペグの目がスッと細められた
 次の瞬間、カルはみぞおちにとてつもなく重い一撃を叩き込まれていた。
 不意を突かれたカルは、防ぐ間もなかった。そのまま崩れ落ちる。かろうじて
 意識は失わなかったものの、立ち上がる事は出来なかった。
 足元で苦しげに上体を丸めるカルをじっと見下ろしていたウィニペグは、その
 視線を呆然とするルーサーに向けた。

 「悪いな、分隊長。こいつが立ち直ったら、病院の場所を教えてやってくれ。
  じゃ、頼んだぜ。」

 そのまま返事を待たずに飛び去る。視線で必死にそれを追うカルに、別の声が
 かけられた。

 「ごめんね。でも、あいつの言う通りにしてちょうだい。こっちはあたし達が
  何とかするから。ね、今度だけ。……ごめんね。」

 言いながら屈み込んだブランカは、カルの頬にそっと手を添えた。
 その手は、かすかに震えていた。困惑がカルの心を満たす。

 やがて、ブランカもウィニペグを追って飛び去った。ルーサーに支えられて
 何とか上体を起こしたカルは、2人の去った空を見上げる。

 「…これじゃ、追っかけたら叩きのめされちゃうな。じゃあ、病院へ行きます。
  なんか、僕がそのまま治療してもらいたいや。」

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 「それは、命令なんですか?」

 落ち着いた内装の個人オフィスで。
 マスクを小脇に抱えたミツ夫は、直立不動の姿勢で言った。

 「いや。」

 目の前のデスクに座った人物は、組んだ手を凝視しつつ低く答える。

 「別に、上から言われてきているわけではない。私自身の依頼だと受け取って
  くれればいい。」

 「ですが、今ごろになって何故?」

 男は、問い返したミツ夫に初めて視線を向けた。

 「聞き及んでいるとは思うが、相変わらず君のチームに対する風当たりは強い。
  マラード教授の参入も、格好の批判材料だ。強顎蟲の殲滅など、これまでの
  実績に関しては誰もが認めているんだが。…やはり、異星間の混成なのだと
  いう点では偏見を持たれやすい。罪人がいるとなると、特にな。」

 「しかし…。」

 拳を強く握り締めたミツ夫は、ゆっくりと言い返す。

 「不透明な部分を明らかにするのは大事な事かも知れませんが、それは同時に
  ご自身の過去の失態を明るみに出す行為かも知れませんよ。」

 「かまわんよ。」

 視線を逸らさず、相手は即答した。

 「私の恥などたかが知れている。しかし、推測というものはどこまでも広がる。
  根拠がなければ、なおさらね。そちらのほうがずっと始末が悪いからな。」

 「わかりました。…では、もう一つだけ。どうしてご自身で行かれないんです?」

 しばしの沈黙ののち。相手はかすかに苦笑した。

 「…それは勘弁してくれよ。君も分かってるだろう?いまさら阿呆面を下げて
  あの2人の前にぬけぬけと出て行けるほど、私には厚かましさも勇気もない。
  私だって人間だ。合わせる顔がないというところは、どうか分かってくれ。」

 「承知しました。」

 ミツ夫もまた、明るい笑顔を浮かべた。

 「その言葉を、ご自身の口から聞きたかったんです。建て前や理屈じゃない、
  人としての本心をね。じゃあ任せて下さい、次長。」

 「すまないな。頼んだよ須羽くん。」

 立ち上がって深々と頭を下げたライジェックに敬礼し、ミツ夫は踵を返して
 部屋を辞した。

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 「カルが来ない!?…どうして!?」

 船舶座礁現場の上空。
 突風に飛ばされそうになる体を立て直しながら、リノが叫ぶ。
 すでに雨も落ちてきている。時間との闘いになりそうだった。

 答えるウィニペグの口調は、淡々としていた。

 「オレが別の仕事に行かせた。別れる前に思いっ切りぶちのめしてきたから、
  ここに来てもどっちみちまともな事は出来ねえぜ。」

 言葉が終わると同時にリノの手がウィニペグの首を掴んだ。そのままの姿勢で、
 じっと睨みつける。緊張が走った。

 答え次第では、今度はあたしがあんたをぶちのめす。

 身じろぎもせずに睨むリノの目がそう言っていた。
 重い沈黙を破ったのはブランカだった。リノの腕にそっと自分の手を添える。

 「待って。…わけがあるのよ。どうしてもその仕事に行かせたいわけが。」

 目だけをブランカに向けたリノは、簡潔に問い掛けた。

 「カルが、殴り倒されるだけの価値がある「わけ」なの?」

 「そうよ。あたしが保証する。」

 答えたブランカの目をしばし睨み据えていたリノは、やがてウィニペグの首を
 掴む手をゆっくりと離した。

 「わかった。信じるよ。」

 そこへ、船舶の座礁状態を調べていたマラードが合流する。

 「船体の破損はそれほどではないが、とにかく嵐に巻かれて転覆する事だけは
  何としても防がんといかんな。4人では厳しいが、やむを得ん。…急ぐぞ。」

 3人は、厳しい顔で小さく頷いた。細かい指示をマラードから聞き、一斉に
 船体の各所へと散って行く。
 雨風は、いよいよ激しさを増していた。

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 「いくらパーマンでも、そんな煤だらけの格好で病棟には入れませんよ!」

 小山のような貫禄の看護師長が、訪れたカルに毅然と言い放った。
 明るい照明に満たされた幼児病棟。師長の後ろにあるドアの向こう側では、
 慰問に訪れたパーマン1号を一目見ようと押しかけた子供たちが大騒ぎをして
 いるのが見える。

 仁王立ちしていた師長の顔に、やがて笑顔が浮かんだ。

 「でも、ありがとう。忙しい中来てくれて。みんな喜ぶわよ。さあ、こっち。
  面会者用の更衣室がありますから、そこで服だけ着替えるといいわ。」

 自ら案内する師長に付いて行ったカルは、子供たちに遠慮がちに手を振る。
 歓声が、一気に大きくなったのがわかった。

 ……みんな、大丈夫かなあ。
 清潔な廊下を歩きながら、カルの思いはやはり仲間のところにあった。

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 「風向きが変わってきた、急がないと!」

 「やってんだろうがよォっ!!」

 荒れ狂う風雨の中、バッジ越しの怒号が飛び交う。すでに、嵐は湾岸に最接近
 していた。

 「怒鳴っててもしょうがないよ!…おじいちゃん、今どんな感じ!?」

 「座礁ポイントからは少しずつ動かせてはおる!しかし…」

 「しかし、何だじじい!」

 ひときわ大きなウィニペグの怒鳴り声が届く。

 「船体の傾斜が大きくなってきておる。このまま傾くと、予定の場所まで運ぶ
  前に船体がこっち側にひっくり返るぞ!せめてあと一人、船体上部を支える
  人間がおれば…」

 語尾は暴風にかき消された。

 「ホントにカルは来れないの!?」

 悲鳴のようなリノの声には、誰も応えなかった。訊いても無駄な事は、リノも
 承知してはいた。
 唇を引き結んだリノの手が、妙な感触の液体に触れる。微かな刺激臭があった。

 「まずいよ!船体のどっかから重燃料が漏れてきてるッ!!」

 「何じゃと!?」

 マラードの返事の声は裏返っていた。最深部を支えているリノ以外は気付いて
 いなかったらしい。
 いよいよ時間がない。燃料が吹き出すか船体が断裂するか、どちらかすれば
 最悪の事態が待っている。しかもこの暴風雨。荒れ狂う海流に乗る海洋汚染は
 どこまで拡がるか見当もつかない。

 「くそおッ!!」

 ずぶぬれの顔を拭い、ウィニペグはうめいた。
 誰も彼を責めようとはしなかった。そんな余裕はなかった。
 やがて、地響きのような音が響いてきた。にわかに船体の荷重方向が変わる。
 大きく傾き始めたのだと、誰もが感じた。
 
 もうだめ。

 燃料まみれで真っ黒になっていたリノは、思わず目を閉じた。
 と、次の瞬間。
 急に腕にかかっていた重さが軽くなった。船体の断裂が起こったのかと皆が
 思ったが、船は形を保ったまま元の角度を取り戻しつつあった。

 「……な、何?」

 思わず手を離しそうになったリノのバッジから、聞き覚えのある声が響いた。

 『力を緩めるなよ!僕一人じゃいくら何でも無理だからな!』

 その声は、天の助けに聞こえた。皆、異口同音に歓声を上げる。

 「バードマン!!」

 リノは、乱暴に顔を拭うと上を仰ぎ見た。風雨が激しくはっきりとは見えない。
 しかし、確かに上方に黒い影があった。引き続き、バッジが怒鳴る。

 『いいか。僕がこの船を持ち上げる。みんなは端から端まで各部分を支えて、
  断裂が起こらないようにしてくれ。あと一息だ、気合い入れて行くぞ!!』

 ミツ夫の参入は、窮状を一変させた。けた外れのパワーで一気に船を浮上させ、
 軍に指示された入り江の砂地まで皆で支えて運んで行く。
 ますます強くなる風雨の中、船は静かに着地した。
 同時に、4人とも落下するかのように砂地に降りた、そのまま崩れ落ちる。
 砂まみれになった4人は、しばし起き上がれなかった。特に燃料まみれのまま
 砂地に転がったリノは、なんだか分からない砂と泥の前衛芸術と化している。

 「大丈夫か?…よく踏ん張ったな。それにしてもカルはどうした?」

 「……オレが、病院の慰問に行かせた。」

 片手だけを挙げたウィニペグが、ミツ夫に答えた。
 その言葉に、リノとマラードは思わず顔を上げる。

 「び、病院の慰問…?」

 あまりにも意外な言葉だった。もっと切羽詰まった重大な仕事だと思っていた。
 しかし、ミツ夫は頷いて短く答えただけだった。

 「…そうか。なるほどな。」

 やがて、ようやく立ち上がった全員に向き直る。

 「何はともあれ、ご苦労さん。とにかく、雨風をしのげる場所に移動して泥を
  落とそう。そのままじゃ風邪ひくから。な。」

 言いながら、目の前に立つ泥人形の頭を手袋で軽く拭う。
 中から、赤いパーマンマスクとリノのふやけた顔が現れた。

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 「なるほどな。タイミング良く来たと思ったけど、用件はそれか。」

 海岸沿いに建てられた簡易休憩所の中。
 マラードが用意した小型の暖房装置で手をあぶりながら、ウィニペグが呟いた。

 「…どうやら、今日はそんな日みたいね。」

 長い髪を乾かすのにてこずるリノを手伝いながら、ブランカも小さく呟く。
 マスクを外した目の前のミツ夫の顔には、特に表情らしい表情はなかった。
 うつむいていたウィニペグは、やがてゆっくりと顔を上げる。

 「ライジェックは来ねえのか?」

 「ああ。」

 即答したミツ夫の声は低かった。

 「合わせる顔がないから勘弁してくれって言ってた。僕に頭を下げてね。」

 しばし黙っていたウィニペグは、やがてフッと小さく笑った。ブランカもまた、
 つられて笑みを浮かべる。張り詰めた空気が柔らぐのが分かった。

 「あいつも、ずいぶんと正直になったな。」

 ゆっくりと呟いたウィニペグはブランカに目を向けた。まっすぐ目を合わせた
 ブランカは、小さく頷く。ミツ夫に視線を戻したウィニペグの顔からは、重い
 影は消えていた。

 「…わかった。案内するよ。はっきりさせておいた方がいいだろうからな。」


 緑涙の嵐の足は速い。いつしか、外の雨風は収まりつつあった。
 足早に外に出たウィニペグとブランカの背中に、ミツ夫が声をかけた。

 「まだ完全には止んでないだろ?…3人くらいなら円盤に乗れるぞ。」

 「遠慮しとく。」

 即答したウィニペグは、ゆっくりとかぶりを振る。

 「急いでは、行きたくねえからな。…ああ、それとエルスン。お前からカルに
  よろしく言っといてくれ。後で殴らせてやるってな。」

 頷くリノに寂しげに笑いかけたウィニペグの体は、ゆっくり舞い上がった。

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 「ちょっと待ってくれ。」

 飛び立とうとした背に、声が投げかけられた。
 顔なじみの消防隊員が、遠慮がちに手招きしている。
 すぐ横で滞空していたスノーウィを待たせ、ウィニペグは再び降下する。

 「別の仕事で急いでんだけどよ。」

 言いながら歩み寄ってきたウィニペグに、消防隊員は一枚の紙を差し出した。

 「実は一昨日、自宅に放火した女性が逮捕された。まあボヤで済んだんだが、
  火を点けた理由を聞いて、我々としても言葉が見つからなかったんだよ。
  …火事になればパーマンが、もっと言えば君が来てくれると思ったらしい。」

 「何だそりゃ。オレの追っかけかなんかか?…聞きたくねえぜそんな話。」

 ウィニペグは、差し出された紙をすぐには手に取ろうとしなかった。
 消防隊員は、防火帽を脱ぐと声を落とす。

 「事情はワシ自身が訊いた。実はその女性の子供が君の大ファンでな。いつか
  パーマン2号に会いたい、いっしょに空を飛んでみたい、友達になりたいと
  ずっと言っているらしい。これはその子の描いた絵だ。」

 改めて差し出された紙を開いたウィニペグの目に、つたない絵が映った。
 デッサンは狂っているが、明らかに自分を描いた物だった。

 「難病で、ずっと入院しっぱなしらしい。親としては、とにかくじっとしては
  いられなかったんだろう。それで思い余ったという事だ。」

 「病気か。……なるほどな。」

 呟くように言ったウィニペグは、絵を4つに折り畳むとズボンの尻ポケットに
 収めた。

 「事情はわかった。だけど、今すぐってのは無理だ。かなり本格的な遭難者の
  捜索に行かなくちゃならねえからな。…だけど、この仕事が終わったら行く。
  そう言っといてくれ。」

 再び舞い上がったウィニペグを見上げつつ、消防隊員はもう一度声をかけた。

 「なるべく早く頼む。かなり切羽詰まっていたようだからな。」

 軽く頷き、待っていたスノーウィに合図したウィニペグは、暗い空の彼方へと
 飛び去っていった。

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 「…あと何人だ!?」

 荒い息をつきながら、ウィニペグがバッジに怒鳴る。
 ほどなく、やはり乱れた呼吸のブランカの声が返ってきた。

 『こっち5人見つけた。そっちは6人よね?あとは…9人よ』

 霙まじりの雨が降りしきる山の中で、4人のパーマンたちは集団で遭難した
 学術グループの捜索に当たっていた。
 全部で35人。しかし、バラバラに分かれた状態で迷ったらしい。それぞれが
 あちこちに散らばって捜し、人数を照会していくしかなかった。
 寒さが体力を奪う中、皆気力を振り絞って雨の中を飛び回る。
 遭難してから3日。体力が尽きた者がいてもおかしくなかった。

 『おおい、聞こえる!?こっちで7人見つけたよ。すごい大漁!!』

 スノーウィと同行していたクルトーのはずんだ声が、バッジに飛び込んできた。

 『お手柄!…じゃああと2人ね。気合い入れて捜しましょ!!』

 割り込んできたブランカの声も、心なしか少し明るく聞こえる。
 見つけた6人をふもとの救護テントに運んだウィニペグもまた、奮い立った。

 「っしゃあ。残りはオレが見つけ出してやる!」

 勢いよく向き直り、そのまま地を蹴って飛び出した。はずみで尻ポケットから
 折りたたまれた紙が落ちる。雨に溶けた似顔絵だった。
 若い女性救護隊員が慌てて拾い上げ、呼び止めようと仰ぎ見る。しかしすでに
 ウィニペグの姿は雨の空に溶け込んでいた。


 少し、明るくなってきた気がした。
 眼下に広がる森を凝視していたウィニペグの目が、崖下のクリーム色の物体を
 捉える。学術チームのジャケットに違いない。
 急降下したウィニペグは、傍らに勢いよく着地した。折り重なるような姿勢で
 うずくまる2人に声をかける。

 「助けに来たぜ。あんたらで最後だ。ホラ早く!」

 声に反応したのは下になっていた人物だった。もぞもぞと動いた拍子に、上に
 被さっていた大柄な男性がごろりと転がる。
 うつろな視線をまっすぐに向けられ、ウィニペグは凍りついた。

 その瞳は、すでに命を宿してはいなかった。
 体の下から這い出したのは、若い女性だった。仰向けに転がった男性の亡骸に
 すがりつき、声にならない嗚咽を洩らす。
 兄妹だろうか、恋人だろうか。転落して傷を負いながら、極寒の雨の中男性は
 力尽きるまでこの女性を寒さから護っていたのだろう。

 『どう!?見つけた?あと2人!!』

 立ち尽くすウィニペグのバッジから、ブランカの声が響いていた。

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 遭難者35名中、34名を救出。1名は死亡。

 この悪天候の中、全員絶望視されていた遭難者を34人も助け出した。
 誇りにしていい事だよ。

 救護テントに引き返したパーマンたちに、レスキュー隊員たちのそんな慰めは
 空虚な言葉の羅列でしかなかった。
 慟哭する女性と、その兄の亡骸を運んできたウィニペグに対し、ブランカたち
 3人にはかけるべき言葉が見つからなかった。
 普段は憎まれ口ばかりの皮肉屋ながら、人命を救う事に関してウィニペグほど
 全力を尽くす者はいない。

 だからこそ、救えなかったという現実は彼の心を押しつぶしていた。

 重い空気に遠慮しながら、ひとりの女性救護隊員が近付いて来た。

 「あ、あのぉ…。2号さん。さっきこれを落とされましたよ。」

 差し出された紙を見ようともしないウィニペグに代わり、スノーウィがそれを
 受け取って開いた。
 雨に滲んで黒ずんだパーマン2号の似顔絵。

 「ねえログナ。今からでもこの子のところへ行ってきなさいよ。」

 その声に、ウィニペグは初めて反応した。
 睨むような目でスノーウィを見据え、手の中の紙に視線を落とす。
 さっきまで、渡された事すら忘れていたものだ。

 それ以上、スノーウィもブランカもクルトーも何も言わなかった。
 言わんとするところは明らかだった。
 自分を慕う子供のもとで、元気をもらってきて欲しい。
 それこそがパーマンとして生きる最大の活力であり、最大の特権なのだから。

 「…わかった。行ってくらあ。…後の事は頼むぜ。」

 「気をつけてね。」

 言いながら、ブランカがそっと近付いてウィニペグの頬を撫でた。
 彼女なりの励ましだった。今は元気を出せとは言えない。

 寂しげな笑みを浮かべたウィニペグは、そのままテントを後にした。
 あえて、誰も見送ろうとはしなかった。


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 「…すまないな。つらい過去を振り返らせて…。」

 2人の後ろを飛ぶミツ夫の声は、いつもよりいくぶん低く聞こえた。
 淡々と、誰にともなく語っていたウィニペグがゆっくりと振り返る。

 「まあ、確かに楽しい過去だとは言わねえけどな。」

 そう言った表情に、重々しさはなかった。

 「だけど、そんな過去だからこそ、誰かに話したくなる時だってあるもんだぜ。
  自分の内側に押し込めてても、疲れるばっかりだからな。」

 並んで飛ぶブランカも、かすかな笑みを浮かべて頷く。

 「……まあ、いい機会なのかも知れねえな。道中の退屈しのぎに聞いてくれよ、
  バードマン。それくらいは付き合ってくれるだろ?」

 「もちろん。」

 頷いたミツ夫の顔にも、もう重い影はなかった。
 3人の飛ぶ先には、雲の切れ目から光が差していた。


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 病院前のロータリーに着地したウィニペグは、泥だらけだった。
 冷たい雨の中での救助活動を終え、そのまま独りで飛んできたのだから当然と
 言えば当然だった。
 何度か搬送などで来た事のある病院だった。ゆえに、突然の来訪にも案内係は
 すんなり対応してくれた。

 渡された真っ白な滅菌タオルで体を拭きながら、教えられた病棟へと向かう。
 特に、何も考えてはいなかった。こういう慰問は初めてではなかったが、今は
 かける言葉などは思いつかなかった。
 むしろ、自分が癒されたかった。

 「…集中治療室だと?」

 目指す病室前に来たウィニペグに、不安が押し寄せた。
 軽く考えていたが、もしかして想像以上の難病なのか。だとしたら…
 ドアの取っ手にかけた手が、かすかに震えていた。
 動悸を押さえながら、どうにかドアを開ける。

 中の照明は暗かった。

 多くの機器に囲まれたベッドの周りに、数人の人々が座っていた。
 枕もとに座っている女性の顔は、憔悴し切っているように見えた。すぐ後ろに、
 刑事とおぼしき男が立っている。
 放火は重罪だ。恐らくは特別な情状酌量からここへ戻る事を許されたのだろう。
 こちらに向けられた女性の表情は、形容しがたいものだった。
 喜びと、絶望と、悲しみが混在する、疲れ果てた顔。
 力のない微笑が、ウィニペグの目に焼き付いた。

 「…パーマン2号さん。……よく、よく来て下さいました。……ありがとう。
  本当にありがとう。」

 言いながら、女性は席を立つとウィニペグに手招きした。はずみでよろめいた
 体を、刑事が支える。女性の身体は痛々しいくらいにやつれていた。
 遠慮がちに、ウィニペグは枕もとに立った。
 呼吸維持機を付けられた少年の目は、穏やかに、しかし固く閉じられていた。
 脇から、女性が覗き込んで囁きかける。

 「ほら、ユージアちゃん。見える?…パーマン2号が来て下さったのよ。…ね、
  見えるでしょ?ほら、返事して。ね?…お願いだから……」

 穏やかだった女性のその声は、次第に取り乱した口調に変わっていった。
 ウィニペグを押しのけるようにして少年の身体にすがりつく。

 「…ねえ、お願いよおッ!お願いだから返事して!……もう一度、もう一度
  お母さんって言って!お願いだからあぁッ!!」

 気圧されて後ずさったウィニペグに、親族とおぼしき男性が小声で言った。

 「…何時間か前までは、何とか意識を保っていたんですが…。なにぶん病気を
  克服するには幼すぎて。もう、目を醒ます事はないだろうと、少し前に宣告
  されました。」

 「……またかよ。ここもなのかよッ…!」

 血を吐くようなウィニペグの呟きに、今度は男性が気圧された。
 力いっぱい握りしめた拳を震わせながら、ウィニペグは目をベッド脇の壁に
 向ける。
 おびただしい数の絵が張られていた。

 自分の姿を描いた絵だった。

 少年を背に乗せ、一緒に飛んでいる絵。
 手を取り合っている絵。
 少年にマスクを渡しているとおぼしき絵。
 4人のパーマンが、少年を囲んでいる絵。

 みな、希望に満ちた絵だった。

 オレと友達になりたかったのか。
 オレと手をつないで、一緒に飛びたかったのか。
 ずっと、それを心の支えにして頑張ってたのか。

 力尽きるまで。

 何だってんだよ。
 オレには、誰も助けられないって、そう言いてえのかよ。

 これがオレの限界だって、そう言いてえのかよ。

 オレの………


 寒々しい室内灯の明かりの下、ウィニペグはただ立ち尽くしていた。

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 大家族の夕餉前は騒がしい。
 兄弟たちの走り回る音を階下に聞きながら、ウィニペグは自室の暗闇の中で
 一人膝を抱えていた。

 やがてゆっくりと立ち上がり、収納台の方に向かう。

 一番下の引出し。ゆっくりと開けたその中に、灰色のコピーロボットがあった。

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 「ちょっと!静かにしなさいってば!!もうすぐご飯よ!…みんないる!?」

 「ウィニーがいないよ。」

 大柄な少年が、のんびりとした声で母親の問いに答える。

 「何やってんのかしらね。誰か呼んできて!」

 「あたし行って来る。」

 大テーブルの端に座っていた、最年少らしい少女がポンと椅子から飛び下りた。
 食堂を駆け足で飛び出すと、機材が積み上げられた暗い廊下を駆け抜けて奥の
 階段を上がる。
 ウィニペグの部屋は2階の突き当たりだった。

 「大兄ちゃん、ご飯だよ。いないの?」

 控え目な声の呼びかけに、返事はなかった。しばし待った少女は、ゆっくりと
 ドアを開ける。
 雑然とした狭い部屋に、人影はなかった。
 少し開いた窓から、冷たい風がかすかに吹き込んでいる。
 室内を見回した少女は、収納台に歩み寄って一番下の引出しを開けた。
 いつもの、身代わり人形がない。
 こんな事は初めてだった。

 「…どこ行っちゃったんだろ。あのお人形まで持っていくなんて…。」

 ゆっくりと窓を閉める少女の耳に、母親のよく通る声が届く。

 「ちょっとペルセ!あなたまで何やってんのおッ!!…お兄ちゃんは!?」

 返事をする代わりに部屋を駆け出し、ペルセは素早く食堂に戻った。

 「お兄ちゃんは?」

 「いなかった。そういえばさっき、ディルワースくんの所に行くって言ってた。
  ごめんなさい、あたしが聞いてて忘れてたの。」

 ごく自然に言った末娘の言葉に、母親は小さくため息をついた。

 「あらそう。じゃ今日はご飯はいらないのかしらね。まあいいわ。それじゃ、
  食べましょ。」

 その言葉を待ちかねていたかのように、騒がしい食事が始まった。

 また、パーマンのお仕事なのかな。
 なんだか、気になるなあ。
 大兄ちゃん、だいじょうぶかなあ…。

 喧騒の中、ペルセは空席となっている隣のウィニペグの椅子に視線を落とした。

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 「ホントにやる気か?」

 高層マンションの屋上で、ウィニペグのコピーは気遣わしげに言った。
 冷え込みの厳しい夜だった。星空は澄み切っている。

 「ゴチャゴチャ言うんじゃねえ。もう決めたってのは分かってんだろうが。」

 言い捨てたウィニペグは、コピーの鼻を押して元の姿に戻した。
 そのまま、独りでしばし空を見上げる。

 ユージアっていったか。
 この空を、オレと一緒に飛びたかったんだろ。
 いいよ。飛ばせてやる。
 オレにできる事なら、やってやるよ。
 できる事。
 色々考えたけど、これしか思いつかなかった。

 これで、勘弁してくれよな。

 視線を手元に戻したウィニペグは、再びコピーを起動した。
 決意を知るコピーは、もう何も言わなかった。黙って目の前のウィニペグを
 見つめる。
 やがて、ウィニペグが静かに語り始めた。


 よう、ユージア。
 オレを待ってたんだってな。遅くなってすまなかった。
 いいお母さんを持ってるんだな。それだけでも幸せだぜ、お前。

 もう一度言う。遅くなってすまなかった。

 ずっと待っててくれたのにな。
 お前が元気なら、一緒に飛んでやれたんだけどな。

 今のオレにできる事は、これだけだ。
 もう戻って来れないっていうんなら、せめて夢を見せてやる。
 この、広い空を飛ぶ夢をな。
 お前にだけ、オレの素顔を見せてやるんだからな。
 ありがたく思えよ。

 それじゃあ、行くとするか。


 息をついたウィニペグは、ゆっくりとパーマンセットを取り出してパー着する。
 そのまま、コピーの手を取って虚空へと飛び出した。

 いつもよりも、星の輝きは眩しかった。
 凍えるような夜の空を、ウィニペグはコピーと共に飛び続けた。
 時には全速力で。
 時には風任せに。
 コピーは、眼下に広がる世界を、そして自分たちを包む星空を目に焼き付けた。

 少年の、覚めない夢のために。

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 深夜の病棟は静まり返っていた。
 閑散とした看護師詰所では、太った看護師が眠そうに舟をこいでいる。
 姿勢を低くしたウィニペグとコピーは、難なくその前を通過した。
 集中治療室も、室内灯は消えていた。
 生命維持装置のランプだけが、寂しげな光を放っている。
 付き添いはいなかった。
 そっとドアを開け、2人は中へと忍び込む。

 ユージア少年の真っ白な顔は、先ほどと同じく穏やかだった。

 ウィニペグは、目隠しをしたままのコピーの手を注意深く曳いた。
 余計な記憶を持たせないための措置だった。
 全てを了解しているコピーもまた、注意深く歩を進めた。
 ウィニペグの手が、コピーの手を少年の小さな額に当てる。

 ここだ。
 頼むぜ、コピー。

 声には出さなかった。手を伝わってきた思いに、コピーは小さく頷く。
 そのまま、ゆっくりと自分の額を少年の額に当てた。

 パーマン2号と共に、空を飛びたいと願っていた小さな命。
 必死に病魔と戦い、力尽きて消えつつある命。
 最期にしてやれる事は、これだけだった。
 ずっと願い続けていた空を、記憶の中だけででも見せてやりたい。

 自分とウィニペグにしてやれる、精一杯だった。


 いつしか、外には細雪が待っていた。


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 目的地は、嵐とは全く違う方向だったらしい。
 山間部に差し掛かるうちに、空の雲は次第に薄くなっていた。

 「ずいぶんと山奥なんだな。」

 辺りを見回していたミツ夫が、小さく呟く。

 「まあな。」

 答えつつ、ウィニペグはキョロキョロと辺りを見回す。隣のブランカもまた、
 同じように何かを探していた。

 「確かあっちだと思ったんだけど………。あ、あった。あれよあれ。」

 ブランカの指し示した先に、十字架のような独特な形の岩があった。

 「お、まだ目印が残ってたか。て、ことは…あっちだな。」

 大きく向きを変えたウィニペグに、2人が続いた。


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 「なんだ、まだ救急隊は来ねえのかよ!」

 土砂崩れに飲まれたバスから乗客を助け出したウィニペグは、腹立たしげに
 声を荒げた。

 「場所が場所だからね。手こずってるんじゃない?」

 土を払いながら、傍らのブランカが答える。

 あれから20日あまり。
 ウィニペグは、ようやく彼らしさを取り戻していた。
 立て続けの悲劇。
 しかし、彼は自分なりに決着をつけたらしい。
 誰よりも心配していたブランカにとっては、怒鳴り声さえも大切に思えた。

 「…重傷者はいないから、空輸してもいいとは思うんだけどね。どうする?」

 遠慮がちなブランカの口調にはわけがあった。
 ここから一番近い病院といえば、あの少年がいた市民病院という事になる。
 できれば、ウィニペグにはあの日の事は思い出させたくはなかった。
 しかし、そんな事は言っていられないかも知れない。
 いざという時には、自分だけで運ぶつもりだった。

 しかし、ウィニペグの返事は存外あっさりしていた。

 「よし運ぼうぜ。こっからのルートならよく知ってる。任せとけ。」

 手早く搬送用の大型担架を作り出したウィニペグに、ブランカは笑顔を返した。

 弱いけど、強い。
 だからこそこの人は、誰よりも頼りになるのよね。

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 搬送は、一度で無事に終わった。
 救急病棟から出たウィニペグとブランカは、ほぼ同時に大きな伸びをする。

 「あーあ。…なんだか疲れちゃったわね。ちょっと診てってもらう?」

 「おいおい、年寄り臭い事言ってんじゃねえよ。さっさと…」

 そこまで言ったウィニペグの動きが止まった。
 ブランカの肩越しに、通路の向こうの人影を凝視する。

 「どうかした?」

 その様子に気付いたブランカの声も、耳には届いていなかった。

 あの刑事だ。
 その前にいる女性。あれはあの子の…

 ウィニペグの視線に気付いた女性の顔が、パッと明るくなった。そのまま、
 足早に近付いてくる。慌てて刑事も後をついてきた。

 「パーマン2号さん!この間は本当にありがとう!!」

 やはり、あの少年の母親だった。しかし、あの時とはまるで別人だった。
 笑顔からは、重い影がすっかり消えている。
 曖昧な返事を返したウィニペグの手を取り、女性は涙を浮かべた。

 「あの子、意識を取り戻したんです。何故だかは分からないんですけど。」

 ウィニペグは、自分の手を握る女性の手に力がこもるのをはっきり感じた。

 「お医者さんも驚いてました。あの植物状態から戻ってくるなんて、奇跡
  以外のなにものでもないって。あの子の、ユージアの生きたいっていう強い
  思いが起こした奇跡だろうって…!きっとあなたのおかげだと思います。
  あなたが来てくれたからあの子は…」

 あとは言葉にならなかった。泣き崩れる女性の体を刑事とブランカが支える。


 全ての声と音が、ウィニペグの耳から遠ざかった。

 自分に向けられた女性の声、ブランカの声。
 いっさい届かなかった。

 あいつが、意識を取り戻した?
 空を飛ぶ夢を見た、あの後で?

 ……あの夢を見た後で?

 じゃあ、オレは。


    オレは……


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 「何でだよおッ!…ウィニペグが何を…何をしたっていうんだよおッ!!」

 ライジェックに食ってかかるクルトーは、すでに涙声になっていた。

 凍えるような月夜だった。
 冷然と立つライジェックの前に、ウィニペグ、ブランカ、クルトー、そして
 スノーウィの4人が並んでいた。

 「たかが子供ひとりじゃないか。なのにどうしてウィニペグが動物なんかに
  ならなくちゃいけないんだよッ!!」

 涙をこぼしながらわめくクルトーに、ライジェックはあくまで淡々と答える。

 「誰に、何人に、というのは問題ではない。自らマスクの中の素顔を見せる、
  その認識の甘さこそが問題なのだ。同じ過ちを繰り返す恐れは充分にある。」

 なおも納得できないクルトーは、さらに声を張り上げる。

 「病気の子供を、夢を見せる事で助けたんだろ!?何がいけないんだよ!なら、
  その子をもう一度……!!」

 「やめろ、クルトー。」

 制したのはウィニペグだった。その声は、落ち着いていた。

 「誰かが助かったって事を、悔やむような言葉だけは口にするんじゃねえ。
  お前もパーマンなら分かるだろ?いや、パーマンじゃなかったとしてもだ。」

 その言葉に、クルトーの気持ちはあふれた。後は言葉にできなかった。
 ウィニペグの胸に顔をうずめ、声を張り上げて泣きじゃくる。
 喪失に対する、正直な、そして精一杯の気持ちの表現だった。

 「いいな、2号。」

 感情を見せないライジェックの声が響いた。

 「弟と妹を頼むぜ。」

 そっとクルトーの頭を撫でたウィニペグは、そう言って突き放した。
 尻餅をついたクルトーには、泣く事さえももはや出来なかった。

 その時、黙って立っていたブランカがウィニペグに歩み寄った。手をかざし、
 ウィニペグの頬に触れる。
 震えてはいなかった。愛しげに頬を撫でる手は、落ち着き払っていた。

 「世話になったなブランカ。また誰か、いい男を見つけてくれ。少なくとも、
  オレよりはいい男をな。」

 ブランカは答えなかった。
 目を閉じ、黙って頬を愛でていた手をふと止める。

 ゆっくりと目を開いたブランカは、笑った。

 晴れやかな笑顔だった。

 「誰がそんな面倒な事するもんですか。あたしはあなたと一緒にいる。」

 その場にいる全員が、耳を疑った。

 「何だと?」

 さすがに驚きを隠せないライジェックの言葉に、ブランカは向き直った。

 「彼が動物になるっていうんなら、あたしも一緒にやってよ。手間はそんなに
  変わりゃしないんでしょ?」

 「馬鹿言ってんじゃねえよ。こんな事に付き合う必要なんかねえ。第一、妹は
  どうする気だよ!」

 声を荒げるウィニペグに対し、ブランカはあくまで落ち着いていた。

 「一生に一度くらい、馬鹿を言わせてよね。」

 その笑顔に、ウィニペグ達は何も言えなくなった。

 「ミナとは、さっき思う存分合奏してきた。もう、あたしの中でのお別れは
  済んでるのよ。だから。…いいでしょ?バードマン。」

 「最初から心を決めてここに来ていたようだな、1号。」

 やはり抑揚のない声でいったライジェックは、細胞変換銃を取り出す。

 「いいだろう。」

 その一言が、最後だった。
 後は、誰一人声を上げようとはしなかった。

 終始ひと言も発しなかったスノーウィが、そのとき初めて顔をそむけた。

 首に巻かれた雪色の襟巻きは、止めどない涙にびっしょりと濡れていた。


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 「ここだ。」

 うっそうとした林の前に着地したウィニペグが、小さく呟いた。
 隣に着地したブランカが、確かめるように周囲を見回す。少し遅れてミツ夫も
 静かに降り立った。

 「ほとんど変わってないわね。」

 懐かしそうな口調でブランカが呟く。
 口を歪めて笑ったウィニペグは、黙って茂みの中に分け入って行く。

 見失わないように、ミツ夫とブランカも後に続いた。


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 月のない闇夜だった。
 寒々とした星明りに照らし出された、山のふもとの廃屋。
 そのすぐ前に、2つの影が音もなく降り立った。

 やがて、小さい方の影が低い声で呼びかける。

 「…ウィニペグ……ブランカ………いるんだろ。…返事してよ。」

 クルトーとスノーウィだった。
 しばし耳を澄ませたものの、返ってきたのは山からの鳥の声だけだった。
 もう一度呼びかけようとした、その刹那。
 にわかに背後の茂みがざわめき、2つの黒い影が躍り出した。
 巨大な体躯を持つ牙犬が、振り返ろうとした2人に飛びかかる。
 不意を突かれたわけではなかったが、2人はあっさりと組み敷かれた。

 長い犬歯を突き立てようとした牙犬の動作が、寸前で止まる。
 唸り声を上げながら、2匹はゆっくりと後ずさった。暗がりの中でも、その
 体が震えているのが見てとれる。

 「久し振り。げ…元気そうだね……」

 無理に自然さを装ったものの、クルトーはたちまち涙声になった。
 ウィニペグとブランカが動物に変えられて、すでに半年が経過していた。
 何度かここを訪れているが、来るたびに2人の動作は殺気立ってきている。
 記憶や感情がどんな状態になっているのかは想像ができない。
 自分たちを認識してくれているのは確かであるものの、今日の反応を見る限り
 それがこの先もずっと続くかどうかは分からなかった。

 家族たちがどれほど心配しているのか、それはあえて伝えなかった。
 悲しませ、心配させるだけだ。
 ならば、出来る限り自分たちが家族を支えるしかない。
 クルトーもスノーウィも、その事だけを考えて力を尽くしていた。

 しかし、この荒れた地で2人が殺伐と暮らしているという事実は、クルトーと
 スノーウィにとっては耐え難いことだった。

 「聞いて、ウィニペグ。……前に言ってたよね。もしもいつか、世界の全てに
  愛想が尽きる日が来たら、オレは広い宇宙へ行ってみたいって。」

 もとウィニペグだった牙犬は、黙ってクルトーの目を見返した。
 次の言葉を待っている風だった。

 「もしも、2人が望むのなら。」

 ゆっくりと話すクルトーの言葉は、自身にも向けられているように聞こえた。

 「それを、現実の事としてもいいんじゃないかと思う。この星で、これ以上は
  どうにもならない一生を送るよりは。本当に2人が望んでくれるのならば、
  新天地へ向かう手助けをしたいんだよ。」

 静かにクルトーの目を見据える2匹の牙犬からは、意志は感じ取れなかった。
 しばしの沈黙ののち。
 スノーウィが口を開いた。

 「ねえ、ゾナ。」

 言いながら、そっとブランカの首筋に手をかける。
 ビクッと怯えたように反応したものの、ブランカはあえてその手を拒もうとは
 しなかった。

 「何ヶ月か前にね、夢を見たのよ。あなたたち、2人の夢を。」

 スノーウィの声は、普段の寡黙な印象からは想像できないほど柔らかかった。


 −夢の中で、あなたたちはもう一度空を飛んでいた。
  笑顔で。
  あたしたちに見せてくれていた、あの笑顔で。

  ここじゃない、どこか遠い場所で。
  あたしたちじゃない、誰かと一緒に。

  そう。
  たぶん誰か、とってもすてきな新しい仲間たち。
  ここで、運命を呪っているだけじゃ出会えない友達。

  …泣きながら目を覚ました時、はっきりと感じたの。
  夢じゃない。
  …ううん、夢に終わらせちゃいけない事なんだって。
  だから、あたしたちに出来る精一杯の事をした。

  あとは、あなたたち次第。
  もう一度あたしを、あたしたちを信じてくれるのなら、一緒に来て。
  あたしたちに、仲間として最後に出来ることをさせて。


 口調は変えなかったものの、スノーウィはブランカの首筋に涙を落としていた。
 2匹の牙犬は、黙って涙を流すスノーウィの手を鼻先でつつく。

 それだけで充分だった。

 「…決まりだね。じゃあ、一緒に来てよ。」

 無理に明るい口調で言ったものの、クルトーもまた泣いていた。


 1時間後。
 山あいにある窪地に、それぞれ牙犬を抱えたクルトーとスノーウィが静かに
 降り立った。
 目の前に、茂みにカモフラージュされた「何か」が鎮座している。
 無言で歩み寄ったクルトーは、防護シートの端に手をかけ思い切り引っ張った。


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 「…着いたぜ。これがオレ達の方舟だ。」

 茂みを抜けたウィニペグが、崖に埋もれた丸い物体を拳で軽く叩く。
 物体は、ゴンゴンと重い金属音を返した。
 土に埋もれている部分をしばし探っていたウィニペグの手が、やがて止まった。
 掴める手がかりを探していたらしい。

 腰を落としたウィニペグは、そのまま裂帛の気合いとともに一気にその物体を
 持ち上げた。

 「うらあッ!!」

 叫び声とともに、被さっていた黒い土と根を張った植物が一気に剥がれ落ちる。
 巨大な金属製の物体が、鈍重な姿を現した。

 錆びと汚れまみれのその物体にじっと目を凝らすミツ夫が、出し抜けに驚きの
 声を上げた。

 「…へえぇ、まさか、こんなもので宇宙を渡って来てたのか。驚いたな。こりゃ
  スタンピードガンナーだ。しかもこの形式番号。…僕が前に地球で破壊した、
  ズファッシュの機体と同じだ…。」

 「何だって?何であんたがそんな事…」

 そこまで言ったウィニペグが、ふとブランカと目を合わせる。ブランカもまた、
 呆気に取られたような表情を浮かべていた。

 「…そうか。そういやあオリジナルのズファッシュはどこか他所の星で、別の
  バードマンに捕まえられたってライジェックが言ってたな。……あれって、
  あんたの事だったのか。」

 「…宇宙って、広いのに狭いのね。」

 堪えきれないと言うかのように、ブランカが含み笑いを洩らした。つられて、
 ウィニペグもまた笑い出す。
 いまいち事情がわからないミツ夫の前で、2人は楽しげに笑った。

====================================

 「…なるほどね。ズファッシュのコピーがいたってのは僕も知らなかったよ。
  じゃあ、この機体はその事件のあと、クルトー君が次長に内緒でコピーした
  ものなんだな。」

 「ああ。研究熱心な奴だったからな。…半年かけて、これを宇宙救命艇に改造
  したらしい。自動操縦で有人惑星に辿り着ける代物に、な。それがオレ達に
  くれた、最後の餞別だったのさ。」

 黙ってうなずいたミツ夫は、古びた機体の側部に回収用の転送チップを付けた。
 ライジェックからの依頼。
 動物に変えられたウィニペグとブランカがどうやってカーロフ星から脱出し、
 この緑涙に辿り着いたのかを明らかにする。

 その答えがこんな形のものだったとは、さすがにミツ夫にも想像できなかった。

 「すまなかったな。こんな事までさせて…。じゃあ、悪いけどこの機体は回収
  させてもらうよ。古びてるとはいっても白兵戦用の自律兵器だ。もし誰かに
  見つかったりしたらコトだからな。」

 「ちょっとだけ、待って。」

 機体の周りを回りながらあちこち見ていたブランカが、声を上げた。そのまま、
 ミツ夫たち2人に手招きする。
 近付いた2人に、ブランカは嬉しそうな顔で外装の端の部分を指し示した。

 「乗り込む時も、降り立った時も全然気が付かなかった。…見て。」

 錆びの浮いた外装に、かすれた文字が書かれていた。

 「これは?」

 怪訝そうなミツ夫の問いに、ブランカは文字を凝視したままポツリと答えた。

 「…エナクリス−オルテ……永遠の仲間。…スノーウィの字よ。」

 言いながら、ブランカは笑顔のまま泣いていた。
 愛しげに、文字を手で撫でる。その後ろで、ミツ夫はウィニペグに声をかけた。

 「バッジを貸してくれ。」

 受け取ったミツ夫は、黙ってブランカの肩を掴むと脇に下がらせた。
 レーザートーチのスイッチを入れ、外装の文字部分を器用に切断する。

 「…冷めるまでは触るなよ。持って帰れ。」

 「いいの?」

 思わず問い返したブランカに、ミツ夫はニッと笑顔を見せた。

 「どうせこの機体は廃棄処分だ。外装が削れてるくらい何てことないさ。」

 熱の抜けた外装片を拾い上げたブランカは、遠い目で空を見上げた。
 雲は晴れ、空は澄み渡っていた。


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 起動したスタンピードガンナーは、重い駆動音を立てながら滞空していた。
 タラップに立つウィニペグとブランカは、もう一度クルトー達2人に振り返る。
 2人は、柔らかな毛に覆われたその首をそれぞれ強く抱きしめた。

 「…頑張れ、なんて言わない。…この星を、この世界を憎むなとも言わない。
  ただ、あなたたちだけのこれからを生きて。あたしたちが望むのはそれだけ。
  あたしたちの事は忘れてくれていい。けど、もしも幸せになれる日が来たら、
  その時は、少しでいい。この星のことを思い出して。少しでいいから。」

 もう、スノーウィにもクルトーにも涙はなかった。
 しばしの抱擁のあと。
 2匹の牙犬は、きっぱりと踵を返した。
 そのまま、振り返ることなく機体の中に消えて行く。

 ゆっくりとハッチが閉じた。
 鉛色に鈍く輝くスタンピードガンナーは、それぞれの思いを振り切るかの如き
 力強い加速で一気に上昇した。

 朝焼けの彼方に飛び去る機体は小さな星となり、やがて消えた。
 クルトーとスノーウィは、しばらく黙ってたたずんでいた。
 やがて、クルトーが小さく呟く。

 「行っちゃったね。」

 「ええ。」

 ぽつりと答えたスノーウィの手を、クルトーの小さな手が掴んだ。
 子供の手だった。

 「……ねえ、スノーウィ。一緒にいてよね。一緒にいられる限りは。」

 震えていた。
 手も声も、かすかに震えていた。
 それが何を意味するのかは、スノーウィにもわかっていた。

 「ええ。一緒にいましょう。許される限り、ね。」

 言いながら、クルトーの手を優しく握り返す。
 2人の姿を、ようやく昇り始めた太陽が淡く照らした。


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 スイッチを入れた瞬間、スタンピードガンナーの姿はかき消えた。
 息をついて端末をしまうミツ夫に、ウィニペグが声をかける。

 「なあ、ひとついいか。」

 「何だ。」

 背を向けたまま、ミツ夫は小さく答えた。
 次の言葉は、ある程度予見していた。そして、覚悟していた。

 「ここまでは素直に協力したんだから、一つだけオレ達にも教えてくれよ。
  クルトーとスノーウィは、どうなったんだ?」

 「聞きたいか。」

 ミツ夫は、向き直る事ができなかった。数回、目をしばたかせる。
 沈黙が返事だった。

 「…お前たちを送り出した4日後、逃亡幇助の罪でパーマンとしての資格を
  剥奪された。次長には、送り出したという事実は認めたものの方法などに
  ついては最後まで何も言わなかったらしい。同時に、パーマンだった事に
  関する記憶も全部消去された。」

 「そうか。」

 ウィニペグの声は、わずかにうわずっていた。振り返ったミツ夫は、天を仰ぐ
 2人の姿を正視できなかった。

 「…じゃあ、あいつらはもう…オレ達の事は覚えてねえんだな。」

 「すまない。」

 うつむいて拳を握り締めたミツ夫の肩に、ブランカがそっと触れた。

 「あなたが謝る事じゃないでしょ?…あたしたちに未来をくれたのは、そして
  スノーウィの夢を現実にしたのはあなたなんだから。」

 その口調は、限りなく優しかった。

 「さあ、過去を振り返るのはこれくらいにしましょう。」

 言いながら、ブランカはゆっくりと浮かび上がる。

 「今が、そう、リノ達が待ってるわよ。帰りましょう。ね!」

 晴れやかな口調で言い放ったブランカの明るい笑顔に、ミツ夫とウィニペグも
 ようやく笑みを返した。

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 「悪かったなホントに。…かまわねえから思う存分やり返してくれ。」

 仏頂面で戻って来たカルの眼前に、ウィニペグは両手を広げて立った。
 他の3人は、黙って成り行きを見守る。
 しばしウィニペグを睨んでいたカルの顔が、フッとほころんだ。

 「…もういいよ。今度から、叩きのめす時は事情を説明してからやってくれよ。
  慰問ついでにちょっと診てもらったけど、内臓の損傷とかはなかったからさ。」

 空気が和むのが、3人にも感じられた。ようやく、皆の顔に笑顔が戻る。
 苦笑したカルが、ポケットから一枚の紙を取り出して広げる。

 「これ、その子にもらって来た。…どうだ?」

 全員の似顔絵だとわかった4人が殺到した。


 「これあたしだよね?髪の毛まで描いてある!一番うまいんじゃないかな…」

 「髪の毛ならあたしも描いてあるじゃない。プロポーションは断然あたしよね。」

 「何がプロポーションだよ。お前一色じゃねえか。色分けはオレが細かいぜ。」

 「一番丁寧に描いてあるのは僕だぞ。」

 「お前のファンなんだから当然だろ?引っ込んでろ。」

 「何を言っとる。顔も目も一番特徴を捉えてるのはワシじゃろうが。」

 「どこがよ。デッサン狂いまくってんじゃないの。…教授付け足しじゃない?」

 「失礼な!!」

 ………………………………


 嵐が去って晴れ渡る空の下。

 言い合う5人の声は、いつまでも高らかに響いていた。


================【完】=================
 
      

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